オフィスマネージャー見習いとして勤務するBetty  credit:John James/University of Birmingham

企業の中で働くロボットと言えば、これまでは産業用ロボットのことだった。これは主に自動車や電子機器を生産する工場などで使用され、人を単純作業から解放してくれた。

だがそれほど遠くない未来、ロボットが同僚になる日がやってくるかもしれない。英国の「トランスポート・システム・カタパルト」で、ロボット「Betty」が今月採用された。Bettyは2か月間、オフィスマネージャ見習いとして勤務する。


オフィスマネージャ見習いとして勤務するBetty  credit:John James/University of Birmingham
オフィスマネージャ見習いとして勤務するロボット「Betty」
目が、キュート?

Bettyは英国バーミンガム大学が開発したロボット。1956年の映画『禁断の惑星』に登場する「Robby the Robot」に、ちょっとだけ雰囲気が似ているのが特徴だ。

参考画像:『禁断の惑星』に登場する「Robby the Robot」
参考画像:『禁断の惑星』に登場する「Robby the Robot」
頭部がスケルトンなあたりが、少し?

「3メートルの宇宙人」
参考画像2:いわゆる「3メートルの宇宙人」
全体のシルエットはこちらの方が近いかも?

その業務は、同社のオフィスマネージャを補佐するもので、オフィス内のパトロールやオフィス環境のモニタリングなど多岐にわたる。モニタリングでは、オフィスの気温や湿度、そして騒音レベルなどのデータを収集し、従業員の労働環境向上に役立てる。防災ドアが機能するか、机の上がきれいになっているかの確認もBettyの仕事だ。その他、来訪者への応対も担当する。

オフィスマネージャー見習いとして勤務するBetty  credit:John James/University of Birmingham
Bettyの仕事例:オフィス内パトロール?

オフィスマネージャー見習いとして勤務するBetty  credit:John James/University of Birmingham
Bettyの仕事例:来訪者への応対

これらの業務を遂行する上で、困難な課題のひとつがオフィス内で物や人にぶつからずに移動することだ。Bettyには事前に、オフィスマップがインプットされてはいる。だがオフィスでは常に新しいOA機器などが設置されたり、廃棄されたりしているため、同じマップを使い続けることはできない。

オフィスマネージャー見習いとして勤務するBetty  credit:John James/University of Birmingham
ドアにぶつからずに隣の部屋に移動することも
ロボットには大変!

例えば小型のFAXがあった場所に大型のプリンターが設置されたような場合、従来のロボットは大型プリンターにぶつかってしまうことが多かった。人の目には大きなプリンターが見えていたとしても、ロボットは依然、そこには小さなFAXがあるだけという認識を持ち続けているためだ。このような問題が発生した場合、従来は専門のエンジニアがオフィスを訪れて、ロボットのマップを変更する必要があった。

オフィスマネージャー見習いとして勤務するBetty  credit:John James/University of Birmingham
冷蔵庫のドアが開いていても、従来のロボットには分からない

だがBettyは違う。カメラなどを使い、周辺環境を自らスキャン。これまで存在しなかったものを認識して自身のマップに加え、これらを避けて動くことができる“人工知能”を持っている。

オフィスマネージャー見習いとして勤務するBetty  credit:John James/University of Birmingham
昨日まではそこになかった観葉植物も認識
避けて移動できる

また、オフィスには常に動き続けているものもある。その最たるものが従業員。従業員はいつどんな動きをするかマッピングできない。また、従業員が立ち上がれば、椅子の位置も動いてしまう。Bettyはこのようなダイナミックな動きにも対応。それらを避けて動くことが可能だ。

オフィスマネージャー見習いとして勤務するBetty  credit:John James/University of Birmingham
飛び出した椅子や袖机にも対応する

これがどれほど大変なことか、家庭でロボット掃除機を使用している人ならわかるだろう。ロボット掃除機は、“掃除”という仕事をしながら、壁や家具などにしょちゅう当たっている。Bettyがロボット掃除機のように壁や家具にぶつかりながらオフィス内を移動したら、ドアは傷だらけになり、窓ガラスは破壊されてしまうかもしれない。さっきまでそこになかった椅子を避けられるBettyの人工知能は、ロボット掃除機と比べると、その先進性の高さが理解できる。

とはいえ不安も残る。例えばBettyの仕事には、従業員が業務時間外にオフィスに残っていないかをチェックするというものもあるのだ。

オフィスマネージャー見習いとして勤務するBetty  credit:John James/University of Birmingham
業務時間外にオフィスに従業員が残っていないかをチェック

現時点では、これは従業員の働き過ぎを防ぐためのもの。従業員の勤務環境を向上させるのが目的の行動だ。だが、そのデータを人間のオフィスマネージャが別の目的で利用する可能性は否定できない。Bettyは24時間勤務しているため、誰が何時から何時までオフィスにいたか、すべてデータとして把握できる。これはちょっと怖いかもしれない。

また、ロボットが“同僚”としてオフィス内に入ることは、多くの人が受け入れられるだろうが、ロボットが“上司”となり、我々の仕事を管理するとなったらどうだろう?ロボットはえこひいきをしないので、仕事の割り振りなどは効率的にやってくれそうだ。だが、なぜかロボットに指示されるのは嫌な気がする。有給休暇の申請をロボットに出すのも、なぜか抵抗を感じてしまう。この感情はどこから来るのかよくわからないが、おそらく多くの人がそう感じてしまうのではないだろうか?

参考画像:『禁断の惑星』に登場する「Robby the Robot」 (Crystal Pyramid ProductionsのPatty Mooney 氏が2006年のSan Diego Comic Conで撮影)
「明日、代休取ってもいいよ!」(by「Robby the Robot」)
(Patty Mooney氏が2006年のSan Diego Comic Conで撮影)

Bettyがどのようにオフィス内を移動しているか、その実際の動きを見たい方は、バーミンガム大学が公開した動画を参照されたい。


ちょっとだけ『禁断の惑星』なBettyが、オフィスマネージャ見習いとして勤務中