橋梁のたわみを撮影する技術者
橋梁の「たわみ」をデジタルカメラで撮影するだけで計測可能に
(提供:産業技術総合研究所)

道路、橋、トンネル。日本の社会インフラは、高度成長期に急速に発展し、「土建国家」と揶揄(やゆ)があったほどだった。それから半世紀、さまざまな設備が老朽化しつつあり、素早く低コストで調査する技術の必要も増している。

産業技術総合研究所(産総研)が開発に取り組んでいるのもその1つ。デジタルカメラで撮影するだけで橋梁の「たわみ」を計測することが可能。格子間隔がほぼ等しい格子二つを重ねたときあらわれる「モアレ縞」という模様を利用し、画像処理によってたわみを算出する。


これまで橋梁のたわみを調べる際は、数日かけて測定場所ごとに足場を組み、地面と橋梁をピアノ線でつなぎ、計測用の変位計を取り付ける作業が必要だった。だが新技術であれば1日で終えられる。またピアノ線を張るのが難しい河川や山間部、渓谷や海でも使える。

橋台で撮影しているようす
こんな場所からも計測が可能だ
(提供:産業技術総合研究所)

開通前の常磐自動車道の常磐富岡インターチェンジ(IC)と山元ICの間にある9つの橋で実験を行い、一定の重さのクルマが通過した際のたわみを計測し、成功を収めた。

実験のイメージ図
常磐自動車道の9カ所で実験し、成功している
(提供:産業技術総合研究所)

産総研は今後、この技術を道路橋だけではなく、鉄道橋やトンネルといった社会インフラや高層ビルなどの変形分布計測に適用する。

また日本と同じく社会インフラの老朽化が進む先進国や、急速な発展により社会インフラの信頼性が十分確保できていない発展途上国にも広げていく考えだ。