ポケットに入るAndroid PC「Gemini」

スマートフォンはコンテンツの消費にはとても便利なツールだ。だが、コンテンツを生産するのにはあまり向いていない。その最大の理由は、物理的なキーボードを搭載していないことにあるだろう。

「Gemini」はこの問題を解決するAndroid PDA。サイズはスマートフォンとほぼ同じで、ポケットに入る小型ボディでありながら、物理的なキーボードが付属している。


ポケットに入るAndroid PDA「GeminiI」
仮想キーボードではなく、物理的なキーボードが装備されたAndroid PDA「Gemini」

ポケットに入るAndroid PDA「GEMINI」
ポケットに入れられるサイズ

開発したのは英国ロンドンに本拠を置くPlanet Computers。同社社員は、外出先でも生産的かつクリエイティブであることに情熱を持っているという。Planet ComputersのCEOであるJanko Mrsic-Flogel博士は、「Gemini」開発の動機について次のように述べた。

「タッチスクリーン付きのスマートフォンやタブレットが広まって以降、これらのデバイスではタイピングが難しいと感じ続けていた。それで我々はパームサイズのキーボード付きモバイルデバイスを再発明しようと決めた。これは外出先で“使える”キーボードがなくて困っている人に、恩恵をもたらすものになるはずだ」

ポケットに入るAndroid PC「Gemini」
外出先でも、生産的かつクリエイティブに

「Gemini」には、4G対応版と、Wi-Fiオンリー版の2つのバージョンが用意される。どちらのバージョンも5.7インチスクリーン、10コアCPU、64GBのストレージなどを装備。Android OSは“最新版”が搭載されるということだが、この仕様であればどのバージョンのAndroidでもストレスなく動作するだろう。Linuxとのデュアルブートも可能だ。

ポケットに入るAndroid PC「Gemini」

ポート/スロットとしては、USB-Cポート(x2)、SDカードスロットなどを装備。4GバージョンではSIMスロットも装備している。4Gバージョンはその他、eSIMにも対応しているという。技適の有無についてPlanet ComputersにEメールで問い合わせたが、本稿公開時までに回答を得ることはできなかった。

2017年3月7日追記:インターネットコムではPlanet Computerに対し、「Gemini」に搭載されるLinuxの種類や、技適取得の有無について問い合わせをしていたが、先ほど回答を得た。Linuxディストロとしては現時点ではUbuntu、Debianが検討対象になっており、Sailfishもありうるという。技適については日本から非常に多くの問い合わせを受けており、取得の方向で検討しているとのこと。これら事項およびAndroid OSのバージョンについては、決定次第、出資者に対し知らせるとのことだった。

サイズは17.13x8.0x1.35センチで、重さは400グラム。サイズとしては確かに、6.0インチ程度のスマートフォンと大差ないものだ。重さはスマートフォンとして考えればかなり重い。だがスマートフォン+Bluetoothキーボードと考えれば、軽いと捉えることもできるだろう。

ポケットに入るAndroid PC「Gemini」
サイズは6インチスマートフォン程度

ポケットに入るAndroid PC「Gemini」
一般的なスマートフォンより少し大きい程度のサイズ

バッテリーには、取り外し可能な8,000mAhのリチウムイオンが採用された。

Planet Computersは現在、「Gemini」の世界的なプロモーションを兼ねてクラウドファンディングサイトIndiegogoで出資者募集のキャンペーンを実施。まだプロジェクトは始まって日が浅いが、すでに目標金額を上回る資金の調達に成功している。

ポケットに入るAndroid PC「Gemini」
キーボード付きアンドロイドを欲しい人は、
世界中にいた?

4G対応版の「Early-bird Special」(349ドル)はすでに600台すべてが売り切れとなっており、本稿執筆時点では399ドルのバージョンが入手可能だ。Wi-Fiオンリーバージョンであれば299ドルで入手できる。キャンペーン終了後の市販価格は599ドル。出荷は2017年12月になる予定。

ポケットに入るAndroid PC「Gemini」
Wi-Fiオンリーバージョンを希望している人は
ほとんどいないようだ

さて、同様のデバイスは20世紀から存在しているし、21世紀に入ってからもNTTドコモが販売していたシグマリオンシリーズや、HPによるjornadaシリーズなどが一部ユーザーからの高い人気を獲得していた。

ポケットに入るAndroid PC「Gemini」
参考画像:HPによるjornadaシリーズ

だがこれらの機種はOSがWindows CEであるなどして、使用できるソフトウェアが制限されていたり、サービスの一部が独自のもので他のデバイスとの互換性が低いなどの欠点を持ち合わせていた。

その点、「Gemini」であればAndroid OSが採用されているため、標準的なGoogleのサービスが利用できる。例えば、出先で浮かんだアイディアをGoogleドキュメントでメモしてGoogldeドライブに放り込んでおく、といった使い方が可能だ。Googleドキュメントはちょっと…という人は、Microsoft Officeを使ってもよいし、編集機能お試し版の搭載されたLibreOffice Viewerを使いたいというチャレンジャーだっているだろう。クラウドもGoogleドライブではなく、OneDriveやDropboxを使える。

クラウドに保存したメモは、オフィスからでも自宅からでも簡単にアクセスできる。「Gemini」を壊してしまったり、どこかに置き忘れてしまった場合でも、メモが消えることはない。

20世紀の懐かしデバイスと思われていたPDAは、実は現在のモバイル環境で初めて、本当に使えるものになったのかもしれない。

ポケットに入るAndroid PC「Gemini」