脳波であやつる電動車いす
実用化する?

「脳波」で制御する電動車いす。いささか夢のような話だが、金沢工業大学は実用化をめざして技術の研究開発をしている。最近その論文が情報処理学会の山下記念研究賞を獲得した。

工学部情報工学科の中沢実教授が2015年、車いすに乗った人が頭の中で目的地を思い浮かべるだけで、自律移動するという車いすを発表。インターネット上でも話題になった。初めて訪れた場所でも脳波から「トイレに行きたい」などの意図を読み取り、目的地までたどりついてくれる、というのが最終目標だそう。


金沢工業大学らによると、実は「脳波で操作する車いすはこれまでにもあった」らしいが前進、右、左方向といった指定する形式で、乗っている人の負担が大きかったそう。しかし今回のシステムは方向ではなく目的地を指定するので比較的楽。

また筋肉に流れる微弱な電流「筋電位」での操作とは異なり、脳波を使うため、幅広い人に適応できるという。

正確にはトイレやロビーといった場所の「名前」を思い浮かべるのではなく、それぞれの場所ごとにあらかじめ割り当ててある「数字」を考える。するとセンサーが脳波を読み取り、分析して走行を始める。人工知能(AI)向け技術の1つ「ディープラーニング(深層学習)」を用いているそうで、多くの人の脳波を収集するほど精度を高められる可能性がある。

中沢教授が成果をまとめた論文は、情報処理学会が高評価を与え、2016年度の授賞対象54編のうちの1つとした。

金沢工大、中沢教授の写真
金沢工業大学の中沢教授

なお山下記念研究賞は、情報処理学会が主催する研究会やシンポジウムにおける発表のうち、特に優秀な論文の発表者に与えるもので、初代情報処理学会会長の故山下英男氏寄贈の資金で運営している。