VAIO type Pのイメージ
かっこよかった「VAIO type P」(出典:ソニー)

ジーンズのポケットに入る小型ノートPC(UMPC)としてかつて多くの人が愛した「VAIO type P」の復活を求める声がまた出ている。海外でUMPCや携帯情報端末(PDA)がクラウドファンディングに次々登場し、注目を浴びた件が刺激になっているようだ。

海外発のUMPC・PDA

GPD Pocketの製品画像
GPD Pocket(出典:GPD)

最近は中国のUMPC「GPD Pocket」、AndroidやLinuxが搭載できる英国のPDA「Gemini」などニッチな製品が相次ぎギーク(技術好き)の注目を浴びている。多くはクラウドファンディングサイト「Indiegogo」などで資金調達に成功しており、スマートフォン全盛の21世紀にあってもこの分野に根強い支持がある証となっている。

一方、日本では不満も漏れ聞こえる。海外生まれの新顔UMPC・PDAの多くは、国内で利用するための基準である「技適」、技術基準適合証明や技術基準適合認定を取得できるかどうかが、なかなか分からない。

またちゃんと予定した時期に製品が受け取れるかどうかもはっきりしておらず、入手できたとしても実際の性能や完成度に少しがっかりさせられる、などだ。

もともとクラウドファンディングは、半ば博打(ばくち)のつもりで新発明や新製品を支援する文化があるため、ある程度のトラブルは覚悟せざるを得ないとはいえ、安心して使える高品質なUMPC・PDAが欲しいという気持ちはどうしても起きてくる。

VAIO type Pを思い出す

VAIO Type Pのイメージ
VAIO type Pを懐かしむ声も(出典:ソニー)

かくして、かつての日本製品をなつかしむ人もいる。よく引き合いに出るのが「VAIO type P」だ。2009年に初代モデルが登場し、ジーンズのポケットに収まらなくもないデザインがすぐ話題になった。

VAIO type Pのイメージ
ジーンズのポケットに入らなく、もないデザイン

UMPCというより「ネットブック」という呼び名の方が通りのよかった時代。この分野に少し遅れてやってきたVAIO type Pは、しかし抜きんでた存在感を放った。

8型ウルトラワイドXGA(1600×768ドット)のディスプレイを備えつつ、内部の基盤を工夫して長形3号の封筒とほぼ同等の245×120×19.8mmの本体サイズを実現。重さは約634gにおさめており、直販サイトのカスタマイズでさらに軽くすることも可能。

快適にタイピングできるようピッチ約16.5mmのキーボードを備え 標準バッテリーで最大4時間30分稼働し、いささか重くなるが大容量バッテリーを付ければ9時間使えた。頭脳にあたるCPUはIntel Atom、メモリー容量は2GB。ストレージは60GBのHDDなどのほか、直販サイトからは64GBまたは128GBのSSDを選択できた。OSはWindows Vistaもあったが、1世代前のWindows XPが人気だった。

VAIO type Pのキーピッチ
キーピッチ16.5mm(出典:ソニー)

さほど動作速度に優れるとは言えなかったが、移動しつつ書類仕事やインターネットサーフィン程度であれば難なくこなせた。ワンセグを付けたり、内蔵のハードウェアビデオデコーダーを使ってハンディカムの撮影動画を再生したりと、マルチメディア用途にも便利。

簡素ながら雰囲気のあるVAIOのデザインに華やかなカラーリングと丸みがあいまって、外観に対する評価も高い。

価格は、店頭モデルが当初10万円前後。直販でのカスタマイズだと7万円程度の構成もあった。予備機として複数台を購入した人や、登場から数年経っても中古を探し回る人もいて、とにかく熱心なファンを生んだ。

新モデルが欲しい

VAIO type Pや後継であるVAIO Pの流れを汲む新たなUMPCを出してほしい、という声は、実のところGPD Pocketなどが関心を集める以前から度々あった。

そこでこの機会にとソニーから独立したVAIOに、過去に似たような要望が寄せられていないか、あるいはクラウドファンディングを生かして新モデルを出すつもりがないかを問い合わせてみた。

回答としては、商品企画戦略に関わるため詳細を明かすことは難しい、というものだった。また日頃顧客からさまざまな要望を受けているが、すべてに応える訳にはいかないとも断っていた。

それでも、会社としてのものづくりのポリシーに照らし合わせつつ、できる限り顧客からの要望には応えたいと考えているとし、「いまだVAIO Pを期待してくださる方がいるのはありがたい」とも述べていた。

VAIO type Pの新モデルがありえるにせよ、ありえないにせよ、製品に対する思い入れはファンだけでなくメーカーにも、とても深いものがあるようだった。