ヒアリのイメージ写真
(出典:環境省)

危険な外来種のアリ「ヒアリ」が大阪の港湾周辺でも見つかり、注目を浴びている。繁殖をつかさどる「女王」の可能性がある死骸も出たため、いっそう話題になっているようだ。

ヒアリは、5月に国内で初めて神戸港で見つかった。毒針を持ち、人間がヒアリの攻撃を受けると、アルカロイド系の化学物質によって非常に激しい痛みを覚え、水疱状に腫れる。さらにアレルギー反応を引き起こす例が、北米だけでも年間1,500件近くあり、100人以上の死者が出ている。呼吸困難や意識障害などを起こす場合もある。


ヒアリのイメージ
(出典:環境省)

南アメリカ原産で、体長2~6mm。胸部を中心に主に赤褐色をしているが、腹部は暗色で艶がある。触覚節数は10節で第3節は長い。

環境省によると、6月末には大阪市の南港でも疑わしいアリが見つかった。すでに捕獲罠、毒餌を設置し、さらに液体の殺虫剤を使って駆除している。

7月3日になって、大阪港で専門家による確認調査を実施したところ、新たに生きた個体は確認できず、先に殺虫剤を使った場所から約50体の疑わしいアリの死骸を回収した。女王アリと思しきものが混じっていいたため、専門機関に分析を依頼したとか。なお周辺に毒餌を増やしているそう。

大阪南港での追加調査のようす
大阪南港での調査(出典:環境省)

女王アリは侵入した土地に定着すれば、大量の子を産み、巣を広げていく。そうなればもう海外から入って来るアリを駆除するだけでなく、国内で新たに増えていく巣を見つけて潰さなくてはならない。

こういたアリの強い生命力、繁殖力について、インターネット上では多くの人が言及している。日本の漫画やゲームなどで、たびたびアリが危険で力強い異種族として登場することも、一因かもしれない。

例えば最近、週刊少年ジャンプで連載が再開した人気漫画「HUNTER×HUNTER」にあらわれるキメラアントは、人間社会を震撼させる外来種として鮮烈な印象を残した。またある年代より上の層では、昔のコンピューターゲーム「ロマンシング・サガ2」に登場するタームを思い出したという人もいる。タームの女王は人間の都の地下に巨大な巣を作り、伝説の英雄にさえ手を焼かせる存在だった。

現実のヒアリはもっと地味な存在ではあるが、人間が死傷するほか、生態系に影響を与える恐れがある。他種のアリと競合し駆逐するほか、節足動物や爬虫類、小型哺乳類を集団で襲って捕食し、鳥類の営巣・雛生育に影響を与える。農林水産業にかわる影響としては牛、馬、鶏など家畜への被害が考えられる。

環境省の近畿地方環境事務所では「ストップ・ザ・ヒアリ」として一般の人でも理解しやすい対策パンフレットをまとめ、Webサイト上で公開している。