PDF HAUSによるコンセプトデザイン「TELAEVIA RETRO TV」
(C) PDF HAUS

いまから1年後の2018年12月には、BSおよびCSで4K・8K放送がスタートする。この放送開始に合わせ、超高精細な画質を持つ大型テレビが販売される予定だ。

そのようなテレビはスポーツ中継やコンサート中継などを視聴するには向いているのだろう。筆者は12月2日、NHKが開催した「放送開始まであと1年!4K・8Kスーパーハイビジョンパーク」で「サカナクション 8Kライブin幕張」を視聴したが、バックで演奏しているメンバーの手元の動きが確認でき、驚いたし、かなり興奮もした。


だが一方で映像を視聴した人たちからは、「あんなすごいもの、リビングに置く必要はないよね?」という声も。テレビでは天気予報と朝ドラくらいしか見ないという人にとっては4K・8Kは不必要なもののようだ。また、そもそもテレビはリビングルームに置かれる様々なインテリアの一部に過ぎず、メインではないので、あまり大型になってほしくないという人もいた。

そんな話を聞きながら、「未来のテレビって、どんなものだろう?」と考えていたときにふと目にとまったのが「TELAEVIA RETRO TV」。これは、PDF HAUSによるコンセプトデザインだ。

PDF HAUSによるコンセプトデザインTELAEVIA RETRO TV
PDF HAUSによるコンセプトデザイン「TELAEVIA RETRO TV」
(C) PDF HAUS

そのコンセプトは、1960年代のテレビのデザインを21世紀のテレビに移植するというもの。デザイナーのHogeun Jang氏はPDF HAUSのWebサイトで、当時のテレビのデザインは家電製品というより、家具に近いものが多かったと述べている。例えばテレビの“足”でさえ、見せるためのデザインが施されていた。一方、現在のテレビのスタンドには、家具のように美しくみせようとしているものはあまり多くはない。むしろ画面に目が行くように、それ以外のパーツはなるべく目立たないよう工夫されているかのようだ。

PDF HAUSによるコンセプトデザイン「TELAEVIA RETRO TV」
左が1966年のテレビ
足は丸くデザインされている
(C) PDF HAUS

現在のテレビは薄く、画面以外はあまり何もない。だが1960年代のテレビは画面以外にも様々なパーツを持っており、それに対して家具に近いデザインがなされていた。それを現在のテレビにも持ち込みたいというのがHogeun Jang氏の狙いのように見える。

PDF HAUSによるコンセプトデザイン「TELAEVIA RETRO TV」
昔のテレビのデザインあれこれ
観音開きの扉付きテレビ、なんてのもありましたね
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もちろん「TELAEVIA RETRO TV」のデザインは当時のものそのままではなく、現代の技術に合わせて見直しがなされている。例えば、昔のテレビでは背面を中心に放熱穴が非常に多くあけられていたが、ここにホコリがたまり、掃除を面倒なものにしていた。「TELAEVIA RETRO TV」にはそのような放熱穴はほとんどない。

PDF HAUSによるコンセプトデザイン「TELAEVIA RETRO TV」
ブラウン管テレビの背面には放熱穴が多くあけられていたが
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PDF HAUSによるコンセプトデザイン「TELAEVIA RETRO TV」
液晶テレビである「TELAEVIA RETRO TV」には不要
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リモコンはとてもシンプル。電源スイッチやボリュームなど、全部で10個程度のボタンしか取り付けられていない。現代のテレビではリモコンには50前後のボタンが付いているのが普通なので、それを見慣れた目にはこのシンプルさは新鮮に映る。

PDF HAUSによるコンセプトデザイン「TELAEVIA RETRO TV」
リモコンはミニマルなデザイン
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さて、4K・8Kテレビは驚くほど薄く、映像は驚くほど美しい。だが電源を切った後の画面は、驚くほど大きく、しかも黒い。何かが表示されているときにはリビングの主役だが、何も表示されていないときにはインテリアとマッチしない、黒いオブジェと化しがちだ。

「TELAEVIA RETRO TV」は、様々な部屋のインテリアと調和しうるデザイン。もちろん、あらゆるインテリアとマッチするとは限らないが、それでも使っていないときでも、そこにあってもよいかな?と思える外観を持っている。多くの家電メーカーが、性能と安さを追求している中で、テレビを家具として捉えるこのコンセプトデザインは、もしかしたら未来のテレビの可能性を示しているかもしれない。

PDF HAUSによるコンセプトデザイン「TELAEVIA RETRO TV」
最近のテレビの外観は黒ばかりなので
白いだけでも新鮮です
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「TELAEVIA RETRO TV」はあくまでもコンセプトデザイン。だが、ぜひ製品化して欲しいと思う。日本版を製造するには、放送方式の違いやB-CASカード問題など様々な障壁があって困難かもしれないが、であれば対応しないままでもかまわないような気もする。「TELAEVIA RETRO TV」にはHDMIコネクターが付いているので、ここにAmazonのFire TV StickやGoogleのChromecastを挿せば、様々な番組を楽しめる。それで十分という人も、いまでは多いのではないだろうか?

PDF HAUSによるコンセプトデザイン「TELAEVIA RETRO TV」
HDMIコネクタさえ装備されていれば
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PDF HAUSによるコンセプトデザイン「TELAEVIA RETRO TV」
様々なストリーミングサービスを楽しめる
それで十分?
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(記事内の画像はPDF HAUSの許諾を得て掲載しています)