感染症のイラスト
(出典:いらすとや)

麻疹(はしか)の流行がインターネット上でも注目の的だ。子どもだけでなく大人もかかり、妊娠している人には影響が出やすいだけに、警戒が高まるのは当然だ。あらためて信頼できる情報源を確認しておくのは重要だろう。

国立感染症研究所(NIID)感染症疫学センターによる8月下旬の発表を見ると、2016年は全国で麻疹の報告が相次ぎ、特にインドネシア、モンゴルなどアジア諸国に渡航歴のある患者の届出が目立つそう。


命にかかわることも

NIIDによると、麻疹は人と人との接触、せきやくしゃみなどの飛沫(ひまつ)、さらには空気でも感染し、1人の患者が平均12~18人にうつすと言われる。例えコンサート会場や体育館などの広い空間であっても、免疫がなければ感染する恐れがある。約10~12日の潜伏期間を経て発症する。

初期は発熱と咳、鼻水、眼球結膜の充血などが数日続いたあと、口の中に白い粘膜疹「コプリック斑」があらわれる。コプリック斑ができると、いったん体温は下がったかのように見えるが、すぐ高熱になり、体に赤い発疹が出て全身に広がる。肺炎、中耳炎などを合併することが多く、麻疹患者の1,000人に1人は脳炎を合併し、命にかかわる。

コプリック斑の写真
口の中に見えるのが「コプリック斑」(出典:NIID)

症状について詳しい情報は、製薬会社がインターネット上で公開している家庭向け医学事典「メルクマニュアル医学百科家庭版」などから入手できる。

マスクや手洗いで予防は難しい

厚生労働省は、専門知識がない人でも理解しやすいQ&Aをまとめている。マスクや手洗いだけでは予防するのが難しく、ワクチンが有効な予防法だとある。

ではワクチンは誰が受けるべきか。原則として定期接種の対象となる1歳児、小学校入学前1年間の幼児、中学1年生、高校3年生相当年齢の人だが、それ以外も麻疹にかかったことがなく、ワクチンを1回も受けたことのない人は、かかりつけの医師に相談すべきという。

また1990年4月2日以降に生まれた人は、定期接種として2回のワクチンを受けることになっているが、それ以前に生まれた人は1回で済ませている場合が多く、免疫が弱まっている恐れがあるそう。

なお、すでに妊娠中の人はワクチンを受けられない。麻疹流行時には外出を避け、人ごみに近づかないようにするなどの注意が必要だ。

感染したら、まず病院に「電話」

ところでNIIDは、麻疹の症状が出た、あるいは感染が疑わしいからといって、いきなり予約なしで医療機関に行くようには勧めていない。先に「電話」してから受診することが、感染拡大を予防する役に立つという。

これは院内で麻疹を広げてしまわないため。まずは医療機関ごとの受診の手続きと注意事項を事前に確認しておきたいところだ。