
スカンクの分泌液を嗅がれたことはあるだろうか?筆者は一度、米国の高速道路でスカンクの死がいの上を走行し、タイヤを廃棄処分にしたことがある。帰宅後、クルマから強烈な臭いが発せられていることに気づき、確認のためにタイヤに触ったのだが、その手からは1週間以上臭いがとれなかった。また、その手で触ったクルマのハンドルやシートベルトは、すべて交換する破目になった。
スカンクはこのように強烈な臭いで身を守っている。その原理を自転車用ロックに適用したのが「SKUNKLOCK(スカンク ロック)」。自転車泥棒を臭いで撃退するU字ロックだ。

ある意味、弱めの化学兵器?
U字ロックは、広く使われている自転車用の盗難防止装置だが、プロの自転車泥棒の手にかかれば30秒とかからずに破壊されてしまう。彼らはバッテリー式のアングルグラインダーを常に持ち歩いており、めぼしい獲物を見つけたら、ロックのU字部分を切断してしまうのだ。

周りの人が気づいて通報しても

「スカンク ロック」のルックスや構造は、市販のU字ロックとほとんど一緒だ。だが自転車泥棒が切断のターゲットとするU字部分には、ガスが仕込まれている。

このガスは完全に密封されているので、通常であれば外部に漏れることはない。だが自転車泥棒がアングルグラインダーでU字部分の表面を一定以上削ると、密閉容器が破壊されてガスが噴出し、自転車泥棒を直撃するという仕組みだ。

その臭いは強烈で、実験でこのガスを浴びた人のほとんどは、激しく嘔吐したそうだ。

周囲の人からはしばらく、「おまえ、臭いぞ」と言われ続けることに…。
スカンクロックの表面には、大きく「SKUNKLOCK」とロゴがプリントされている。さすがにこれは、ちょっと恥ずかしい。たとえば日本で、「スカンクロック」と書かれたU字ロックを取り付けた自転車が駐輪していたらどうだろう?多くの人は何かのジョークだと勘違いし、笑ってしまうのではないか?

だが開発者は、このロゴ自体が、今後自転車泥棒よけの効果を持つようになると主張する。
米国では、盗難された自転車はブラックマーケットで、1台平均40ドル程度で取引されているという。だが、「スカンク ロック」から噴出されるガスを浴びた場合、泥棒が着用していた服や靴、そしてアングルグラインダーにその臭いが染み付き、洗っても取れず、すべて廃棄処分になってしまうそうだ。その金額は、40ドル以上になってしまう。
これでは自転車を売って40ドルを手に入れても意味がない。このため自転車泥棒は、「SKUNKLOCK」という文字を見ただけで盗難をあきらめるようになるという。現在米国では年間150万台の自転車が盗難されているが、「スカンク ロック」が普及することで、その数が減少することを開発者は望んでいる。

開発者のDaniel Idzkowskiさんは現在、「SKUNKLOCK(スカンク ロック)」の市販化を目指しクラウドファンディングサイトIndiegogoで出資者募集のキャンペーンを実施中。本稿執筆時点では、99ドルの出資で「Super Early Bird」版を入手可能だ。入手に必要な金額はキャンペーンが進むにつれて上昇し、終了後の市販価格は160ドル程度になる予定。出荷は2017年6月頃とされている。
