Google翻訳のパロディ
一見すると、Google翻訳で撮影した風景のようだが…?(出典:ひげよし氏のTwitter)

看板やTシャツ、お菓子の包み紙に書いてある英語に、iPhoneをかざすだけでそのまま日本語にしてくれる「Google翻訳」アプリケーション。それを使って街の景色を撮影したところ、驚くべき結果になった、という写真が注目の的だ。しかしよく見ると何かがおかしい。

Google翻訳は以前からあるアプリだが、最近機能を拡充。身の周りにある英語の単語や文章に、iPhoneやAndroidスマートフォンのカメラをかざすと、即座に日本語に置き換えて表示できるようになった。逆に日本語を英語に置き換えることも可能だ。


Google翻訳のイメージ
Google翻訳の「Word Lens」機能が日本語に対応した

ちなみに精度はほどほど。昔のハリウッドのSF映画に出てくるような、おかしな日本語になることもままある。しかし、かえってそれが面白いとして話題になり、多くの人が翻訳結果をTwitterなどでシェアしている。

「ひげよし」氏が投稿した写真も、一見するとそんなGoogle翻訳によって奇妙に変化した風景のようだ。しかし少し注意深く観察すると看板が「消費しろ」「テレビを見ろ」「目覚めるな」といった、どことなく不気味な文言に変わっている。


我々の生きる消費社会がかかえる欲望や抑圧がむきだしになり、隠れていたもうひとつの現実があらわれ出たかのようだ。

そう、これはジョン・カーペンター監督が手掛けた1988年のSF映画「ゼイリブ」のパロディアートだ。ゼイリブでは、特別なサングラスをかけた主人公が街を歩くと、ちまたにあふれる手の込んだ広告に「消費しろ」「考えるな」「結婚して子供を作れ」「権力に従え」といった何者かによる命令が潜んでいるのが分かり、そこに生きる人々の多くがすでに、歩く死者のような姿をした、おぞましいエイリアンに置き換わっているのも知る。


ひげよし氏のパロディアートは、Google翻訳の新機能が、商品や看板を飾る美しい英語、日本語をおかしなものに変える効果を、ゼイリブの世界観と重ね、ひとひねりした仕上がりになっている。

ただ今後アプリの精度が上がれば、さまざまな広告はより自然な表現に翻訳できるようになり、もうひとつの現実が垣間見えるような、奇妙な感覚は解消していく、かもしれない。