早川書房のイメージ

SFやミステリーの老舗出版社として本を愛する人から親しまれている早川書房。インターネット上でも新刊やイベントの紹介など熱心に活動している。だがTwitterでは「本物」と認めてもらえず、アイディンティティ喪失の危機に陥っているようだ。

早川書房は2009年にTwitterに登録し、数年にわたって読者や作家などと広く交流してきた。日々の発言を見ている「フォロワー」は今や5万以上。


多くのつながりや根強い人気に後押しを受けてか、早川はこのほどTwitterに「認証済みアカウント」の申請をしたらしい。

認証済みアカウントとは、Twitter上で著名人や大企業を騙るニセモノが登場しても見分けがつきやすいよう、本物に青いバッジを表示する制度。従来はTwitterが選んだ相手にだけバッジを授与していたが、2016年から誰でも申請が可能になった。

といっても手続きは簡単ではない。認証済みの電話番号、確認済みのメールアドレス、自己紹介、プロフィール画像、公式サイトなどが必要。さらに審査にあたって追加情報を出さなくてはいけない。青いバッジが欲しい理由を答えねばならず、企業であればその使命を語るとか、まるで就職活動で履歴書を埋めるような作業だ。

しかも就活と同じく、一生懸命働きかけても、通るかどうかは相手次第。

残念ながら早川の申請は却下となったらしい。がっかりしながら「公式のアカウントであるにもかかわらず、ツイッター的にはニセモノと認定されたことに。アイデンティティ喪失の危機」と冗談を述べている。

Twitterの説明によると、青いバッジは「音楽、演劇、ファッション、政府、政治、宗教、ジャーナリズム、メディア、スポーツ、ビジネス、その他の注目分野のアカウントによって管理されているアカウントが対象」。「本」や「出版」はないようだ、と早川は残念そうだ。






ひょっとするとメディアなどに含めているのかもしれないが、なるほど出版社で青いバッジを持っていないところは多い。早川と同じくSFやミステリーで知られる東京創元社や国書刊行会などもしかり。海外のAce/Roc Books、Baen Books、Daw Books、Tor BooksといったSFをよく刊行する出版社を見ても同じ傾向が見られ、日本だけではない。

そもそもTwitterにとってあまり優先度の高い分野ではないのかもしれない。

とはいえ、青いバッジがなくても読者はあまり気にしていないようす。今回の一件も、Twitter上の早川が実は人気SF小説「戦闘妖精・雪風」に登場する、異星人「ジャム」が作った本物そっくりのコピーだからではないか、といった笑いの種にして、かえって楽しんでいる向きもある。