アルファ碁が中国遠征

かねて噂のあった人類とコンピューターシステムのあいだで囲碁最強を決める対局が実現しそうだ。Google(グーグル)傘下のDeepMindが人工知能(AI)向け技術を用いて開発した「AlphaGo(アルファ碁)」と、中国のプロ棋士、柯潔氏がついに公式に試合を行う。

アルファ碁は2016年、韓国の李世ドル氏を破って注目を浴びた。当時のGoogleの派手な宣伝もあってか、一部のニュースサイトなどは李氏をプロ棋士の代表として扱い、その敗北をもって、AI向け技術である深層学習(ディープラーニング)などの衝撃を強調した。


ただ実際には有志による世界ランキング「Go Ratings」の頂点に位置していたのは李氏ではなく柯潔氏。ゆえに囲碁の世界においてまだコンピューターシステムの人類に対する完全な優位は確定していないと見るむきもあった。

もっともその後、アルファ碁の改良版は「Master(名人)」を称して正体を伏せ、インターネット上で囲碁を遊べる「野狐囲碁」に参加。同様に覆面で遊んでいたプロ棋士を次々と破っており、すでに趨勢は決したとの評判もある。

野狐囲碁での対局
野狐囲碁での対局 Master(アルファ碁) 対 潜伏(正体は柯潔氏とのうわさ)

いずれにせよアルファ碁の瞠目すべき強さは囲碁の世界をゆり動かし、各国の企業や団体は深層学習などを生かして囲碁を打つコンピューターシステムの開発を加速。日本の「DeepZenGo(ディープゼンゴ)」や中国の「FineArt(絶芸)」が台頭し、いずれも人類のプロ棋士に匹敵あるいは凌駕する技量を示すようになった。

柯潔氏は、FineArtの練習相手を務めており、今やコンピューターシステムの強さを熟知する立場だ。

こうした状況下でGoogleは中国囲碁連盟および中国政府と協力し、5月23~27 日の 5 日間にわたり、中国の烏鎮市で囲碁イベント「Future of Go Summit」を開催する。

Googleが公開した
過去の GoogleのピチャイCEO(中央)と柯潔氏 (一番右)らの交流のようす

中国のトップ棋士に加え、Google および中国のAI研究の専門家が参加し、3つの試みを行う。

1つ目は「ペア対局」。アルファ碁とペアを組んだ中国のプロ棋士同士が対局し、「共に学ぶ」というコンセプトのもと、棋士とアルファ碁が交互に手を打つ。

2つ目は「チーム対局」。アルファ碁が中国のトッププロ棋士5人のチームを相手に対局する。棋士が力を合わせてアルファ碁の創造性と順応性を試す。

そして3つ目が「柯潔 対 アルファ碁」。大会の目玉としてアルファ碁が世界最強の棋士である柯潔と伝統的な全 3 局の1対1の対局に挑む。

対局の合間には「Future of AI」と題した討論会の開催を予定しているという。