“クルマをまたいで走るバス”、やっぱり詐欺だった

昨年8月に試験走行が実施され、大きな話題となった“クルマをまたいで走る電動バス”「Transit Elevated Bus(TEB)」。その下にクルマが吸い込まれていく様子から“クルマを食べるバス”とも呼ばれた「TEB」が本格運行を開始することはなかった。それどころか、TEBプロジェクト自体、大規模な詐欺であったことが判明した。中国Southern Metropolis Dailyなどが伝えている。

「TEB」は、交通渋滞緩和目的で計画された公共交通機関。“道路上の空間”というデッドスペースを活用することで、道路を増やした場合に近い効果が得られると期待されていた。


【悲報】“クルマをまたいで走るバス”、やっぱり詐欺だった

だが今年7月9日、中国北京市公安局東城区分局は公式Weiboで、TEBプロジェクトと同プロジェクトに対しての出資を募る投資プラットフォームHuaying Kailaiの双方を運営していたBai Zhiming氏ら被疑者32名を拘留し、取り調べを開始したと発表した。公安局は、投資者からの出資金の回収などに全力で当たるとしている。

【悲報】“クルマをまたいで走るバス”、やっぱり詐欺だった

投資プラットフォームHuaying KailaiはTEBプロジェクトに対する出資を高利回りを謳って募集したが、昨年8月の試験走行以降、TEBプロジェクトはその後のプランを提示することはなかった。試験車両はテストレール上に放置され、秦皇島市の渋滞を解消するどころか交通上のボトルネックになってしまっていた。地元の人が中国の通信社中国新聞社に語ったところでは、テスト走行は数回実施されたがスタッフはある日突然姿を消し、その後「TEB-1」が走ることはなかったという。

また、昨年12月に米国CNNが報じたところによれば、CNNの取材時にはTEBプロジェクトを推進するTEB Technology Developmentの北京オフィスは照明がほとんど消えており、わずかに残った従業員も今後のことはわからないと語ったそうだ。

中国河北省の秦皇島市で試験走行を実施した「TEB-1」は、長さ22メーター、幅7.8メーターで、高さ4.8メーターの試験車両。片側2車線の道路をまたいだ位置に設置されたレール上を最高時速60キロで走行し、最大で300人を収容できるとされていた。昨年の5月に模型が公開された時点では、実際に街を走ることはないだろうと考える人も多かったが、この試験車両「TEB-1」が公開され、短い距離ながら実際に走る姿が動画で流れたことで多くの人々がその実現を信じた。

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第19回中国北京国際科技産業博覧会で公開された模型
この時点では疑いを持っていた人も

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試験車両には驚いた

とはいえ、試験車両によるテスト走行映像が公開された際にも、「バスは長すぎて、カーブをうまく曲がれないのではないか?曲がれたにしても、その間、下をクルマが走行するのは無理ではないか?」「バスの下は狭く、天井は低い。ドライバーは心理的な圧迫を感じてブレーキを踏んでしまい、かえって渋滞が増えるのではないか?」「バスの下で自動車事故が発生し、バスが走行不能になった場合、どのようにして怪我人を助けだすのか?」といった懸念が指摘されていた。また、テスト用のレールの長さはわずか300メートル。この長さでのテストに意味があるのだろうか?という声もあがっていた。