ヤマハ発動機はモトクロス競技用「YZ450F」を5年ぶりにフルモデルチェンジし、11月30日に販売開始する。

ヤマハ モトクロス競技用「YZ450F」を5年ぶりにフルモデルチェンジ - レブリミット500r/minアップの新設計エンジン搭載

新型「YZ450F」の開発コンセプトは"Synchronizing the YZ with Every Rider"。これを実現するために、1. パワフルで扱いやすい軽量な新設計エンジン、2. 新設計クラッチと新トランスミッション、3. 軽快性と安定性を高次元で両立した新設計バイラテラルビーム・フレーム、4. 軽量コンパクトを具現化した外観デザインなどを採用した。


ヤマハ モトクロス競技用「YZ450F」を5年ぶりにフルモデルチェンジ - レブリミット500r/minアップの新設計エンジン搭載

YZ450Fの主な特長

1. パワフルで扱いやすい新設計軽量エンジン

吸気経路を徹底的に見直し、ピストン、ボディーシリンダー、クランクアッセンブリー、ドライサンプ潤滑など、多岐にわたって新フィーチャーを織り込んだ。これらの相乗効果によりレブリミットが500r/minアップ(出力約5%向上)している。

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エンジン単体では従来から1.1kg軽量化。ボア・ストローク、圧縮比は従来と同様ながら、下記の施策との相乗効果でリニアな出力特性、高回転での伸びなど、性能向上を実現している。

・ パワー感をもたらす吸排気ポートまわりの変更

吸気ポートの最も細いスロート部形状付近の混合気の流れを円滑化するため、鋳造後に2度の加工を加えてマルチアングルオーバル形状とし、吸入空気量アップを図った。同時にチタン製の吸気バルブは径を拡大し、最大リフト時の吸入空気量を従来比で9%アップしている。

・ ピストン、クランクアッセンブリーを新設計し、軽量化とドライバビリティを向上

ピストンは、燃焼室の形状と天面形状を見直し、裏面のリブ形状の最適化を施した。クランクアッセンブリーも新設計。クランクピン軸受けは、従来のニードルベアリングに替えてプレーンベアリングとして軽量化。コンロッドも新作している。

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クランク外径を拡大し、重量効率を改善。慣性モーメント・バランスを維持しながら軽量化を達成した。さらにクランクウェブは肉抜き加工し、またバランサーを一新して、ドライバビリティを向上している。


・ 新気取り入れ通路を一新しリニアなレスポンスとボディのコンパクト化を両立

吸気の経路を「サイドカバーとタンクの隙間」、及び「メインシート下」に設けた。新気はサイドカバー/タンク/フレームに沿って、またタンク/シートに沿って通過。最適な吸気経路を導いたことにより、軽量・スリム化し天面高も低減。さらに吸気通路への水・埃・泥の浸入も抑制する。

ヤマハ モトクロス競技用「YZ450F」を5年ぶりにフルモデルチェンジ - レブリミット500r/minアップの新設計エンジン搭載

2. 新設計のクラッチ、ミッション、シフター

クラッチはスチール製プライマリーギアとアルミ製ハウジングを別体としていた従来式に替え、プライマリーギアとハウジングをスチール製の一体構造とした。クラッチスプリングは、コイルに替えてダイレクト感が特徴の皿バネ式とし、軽量化とナロー化を実現。クラッチ単体では3.14kgから2.39kgへと約0.75kg軽量化している。またエンジンの左右幅は8.5mm短縮となり、ボディ幅もスリムとなった。

トランスミッションも新設計。メイン軸とドライブ軸間を従来から7mm広げることで各ギアの大径化を図り、強度を高めつつ軽量化も達成。さらにトランスミッションの新作にあわせ、レイアウトを最適化した軽量シフターを新作した。

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3. トラクションコントロールシステム初採用

走行時に後輪のスリップ量変化をECUにフィードバックし、点火制御で出力を抑えてトラクションを維持するトラクションコントロールを新採用した。介入度は「OFF」(デフォルト値)含め3段階に調整可能で、介入度設定はパワーチューナーのアプリ上で行う。

またローンチコントロール・システムには、スタート時のレブリミット(回転数上限設定)機能を追加。6,000-11,000r/minの間で500r/min刻みで設定できる。

4. 軽快性と安定性を高次元で両立する新設計バイラテラルビーム・フレーム

"スピードを維持したままコーナー進入ができ、旋回中のライン自在度が広いこと"を照準にフレームを新開発した。倒し込みの軽快感や自然な舵角感、ライン自由度などにも寄与し、高次元なバンプ吸収感とコーナーでの俊敏性、回頭性を実現している。

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5. シームレス外装に、アクションの自由度を広げるシート、ライディングポジション

ボディ外装は、シートエッジからタンク、サイドカバー、シュラウドに至るまでライダーが触れる部分に丸みをもたせシームレス処理している。また従来のフロント吸気ダクトの廃止により、シュラウドは左右幅を従来比で50mmナロー化。新作タンクは幅を従来比で6mm削減。さまざまなライディングアクションにフィットし、軽快な乗車フィーリングをもたらす。

シートは、アクション自由度を広げるため天面高低差を従来比15mmフラット化。シート後方にはわずかなストッパー形状を織り込んで加速の際のホールド性を考慮している。

ライディングポジションも一新。従来比でフットレストを5mmダウン、ヒップ~フット間を10mm拡大、ハンドル位置はパイプ1本分手前に寄せるなど、自然な姿勢を得やすくした。


6. 前後サスペンションのセッティングを変更し、トラクション感とバンプ吸収性能を向上 手回し圧減衰アジャスタ追加

前後サスペンションは、トラクション感とバンプ吸収性能の向上を照準に減衰特性をセッティングした。フロントには工具不要で圧減衰調整できる手回し圧減衰アジャスタを新たに採用している。

さらにインナーチューブ表面劣化を防ぐために強化ダストシールを採用。リップ長をアップし、優れた追従性によりダスト侵入を抑制、オイルにじみのリスクを低減した。

7. 軽量コンパクトを具現化した外観デザイン

"An Amazingly Light YZ" をデザインコンセプトとし、軽快感のアピールやコンパクト化、そしてライダーが体を動かしやすくするために、フロントフェンダーやシュラウドなどのフロント周りを中心に進化・熟成を図った。YZの特長であるホリゾンタル・ムーブメントも進化。モトクロッサーならではのスピード感を高め、外観からマシンの性能の高さを表現している。

モトクロス競技用車両の2023年モデル発売

ヤマハはまた、モトクロス競技用車両「YZ250F」「YZ250」「YZ125」「YZ85LW」「YZ85」「YZ65」の2023年モデルを10月31日に販売開始する。各モデルには直線的なホリゾンタル・ムーブメントのグラフィックと、ヤマハブルーに異なる色域のブルーを組み合わせたカラーリングを採用した。

ヤマハ モトクロス競技用「YZ450F」を5年ぶりにフルモデルチェンジ - レブリミット500r/minアップの新設計エンジン搭載

「YZ250F」「YZ125」には、ファクトリーマシンのカラーリングイメージを再現した「Monster Energy Yamaha Racing Edition」も展開する。

ヤマハ モトクロス競技用「YZ450F」を5年ぶりにフルモデルチェンジ - レブリミット500r/minアップの新設計エンジン搭載

メーカー希望小売価格は次の通り。

ヤマハ モトクロス競技用「YZ450F」を5年ぶりにフルモデルチェンジ - レブリミット500r/minアップの新設計エンジン搭載