
■「俳句」が写真の見方を変える
ネコ写真家の沖さんは、「無重力ネコ」「KISSネコ」など、明確なテーマを持って外ネコを撮影されている方。作品の多くでは、沖さんの、そしてネコたちの(?)意図がわかりやすく表現されています。

でも中には沖さんの狙いが見えにくいものもあります。例えば次の写真では、筆者の目には最初、ネコしか映っていませんでした。
でも、この写真を『俳句ねこ』で見て、添えられた俳句を読んで、沖さんの意図が初めて理解できました。この写真で沖さんが撮影したかったのは、ネコとその影だったのです。

影がくっきりと見えてきます
『俳句ねこ』にはそんな、ちょっとした「アハ!体験」を味わるコラボ作品が多く収められています。
また、『俳句ねこ』のページをめくっていると、自分でも俳句を詠んでみたくなります。詠んだ俳句をネコ写真の隣に並べて飾るのも楽しそうです。
■俳句で、ネコをシェア
『俳句ねこ』には、よく知られている俳句を、よりリアルに体感できるコラボ作品も収められています。例えば、小林一茶の俳句「猫の子が ちょいと押へる おち葉かな」。有名な句なのでご存知の方は多いでしょうし、解説本を読んで意味を知っている人も多いでしょう。

でも、この俳句に沖さんの写真が添えられると、この俳句を詠んだときの小林一茶の気持ちが、ぐっと身近に体感できるようになります。

写真に写っているネコは子ネコではないし、葉を押さえてもいません。でもきっと小林一茶は、ネコの動きを見てカワイイと思ったんだろうな、ということが伝わってきます。
また、この写真と俳句を見ていると、俳句には現代の写真に近い役割があったこともわかります。目の前にいるネコの動きを季節感と一緒に言葉で封じ込め、多くの人とシェアしたい。そんな気持ちが感じられます。もし小林一茶が現代に生まれていたら、インスタグラムを始めていたのではないでしょうか?
ちなみに、小林一茶の作品には、「春雨や猫に踊りを教える子」などネコが登場する俳句がいくつも。そんなネコ俳句を集めて自分なりのイメージを練り上げ、それにあったネコ写真を撮影してみる…なんていう遊びも楽しそうです。『俳句ねこ』はそんな新しい楽しみへのヒントも与えてくれます。
一冊あればいろいろ遊べる写真集『俳句ねこ』は全96ページ。全国の書店やAmazon.co.jp、楽天ブックスなどで12月14日から購入できます。価格は1,512円です。

(記事中の画像は沖昌之さんの許諾を得て、写真集『俳句ねこ』、および沖さんのInstagramから転載させて頂きました)